投資のバイアスとその対策【投資家は定期的にチェックすべし】
<投資の落とし穴>
このブログでは定期的に思考のバイアスについて取り上げています。
この場合のバイアスというのは私達が持っている思い込み(思考の偏り)のことで、これが発生することで人間は度々判断を間違えてしまうからです。
しかもこのバイアスというものはかなり種類が多いんですよ…パレオな男でも40のバイアスについて紹介してくれていて、定期的に読み返しに言っています。
今回はメンタリストDaiGoさんが『コロナ経済でも損しないための【投資家が陥る15のバイアス対策】』という放送で投資におけるバイアスとその対策を示した論文を紹介してくれていました。チャンネル宣伝のための質疑応答放送もYoutubeでもされており、なかなか面白い内容でした。
私もテーマを絞ってバイアスを取り上げてみようと思いました。
※メンタリストDaiGoさんの放送内容を転載するものではなく、紹介された論文とこれまでの記事を元に個人的な意見を述べるものです。
この記事からわかること
・バイアスの仕組み
・投資家が陥りやすいバイアス8ポイント
<バイアスの仕組み(読み飛ばし可)>
バイアスとは本来「偏り」のことで、これを省かないと正確なデータを取ることができないことで知られています。例えば「コロナウィルスの死亡率を調べよう」と思って、街頭インタビューを行い、「あなたはコロナウィルスにかかったことはありますか?」と聞いた場合、コロナウィルスの死亡率は0%という結果が出てしまいます。死人はインタビューに答えることが出来ませんからね。これが『生存者バイアス』です。
思考のバイアスの場合は「前回上手くいったから今回も上手くいくだろう」「自分は大丈夫だろう」といった、論理的な根拠のない思い込みのことであり、全く無自覚の間に発揮されていることが多いため非常に厄介です。これらは人間の直感的判断と論理的判断の対立によって起きる判断ミスの原因として心理学の分野ではよく知られているものばかりです。優秀な投資家であってもそのバイアスによって判断を間違え、大きな損失を被ることが少なくないのです。
<ケネソー州立大学の報告>
発表:2009年
今回は行動心理学における認知バイアスについて調べた研究です。以前ペンシルベニア大学が提案した『デバイアス』(バイアスを対策する)に近い研究と言えそうですね。こちらが興味がある方は以前の記事をどうぞ。
今回はこの研究や書籍を参考にバイアスの種類と対策について私なりにまとめてみましたので紹介します。バイアス回避で大事な第一歩としては知っておくことです。これだけでもかなり効果が高いデバイアス効果が発揮されます。
1.現状維持バイアス
人間は変化を嫌う生き物であり、不安の感情が強くなるとこの傾向も強くなります。そのため、市場の先行きが不透明な時に現状維持の選択を選びがちになります。現状維持も選択の一つではありますが、それが本当に正しい判断なのかどうかというデータを集める前に決めてしまうのです。
本来投資というのは値段が上がっている時に売って、値段が下がっている時には買うものです。しかし株価が下がって不安が高まった時についつい逆の行動をしてしまいがちです。
こちらの対策としては「不況時にどうするか」「どこまで行ったら売却するか」など、自分の意志と関係なく行動するためのルールや仕組みを作っておくことが大切です。また、実際に現状維持を選ぶときでも、動き出すラインや損切りするタイミングは必ず決めておきましょう。それが難しい場合は「毎月1回は投資する」というように、現状維持バイアスを回避する仕組みだけでも作っておきましょう。
2.損失回避バイアス
人間は得をすることへの欲求に対して、損をすることを極端に恐れる傾向にあります。「1万円もらえた喜びと5000円失った悲しみはだいたい同じ」なんて言われるように、損に対して極端な反応をしてしまうことで、投資における判断を間違えて損失を広くしてしまうのです。
よくあるパターンだと
・マイナスになってほしくないので利確のタイミングが早くなる(利益が伸びない)
・損が確定するのが怖いので損切りのタイミングが遅くなる(損失が膨らむ)
ということが初心者などでは頻繁に起きてしまいます。投資経験者の方は思い当たる部分があるんじゃないでしょうか?
これの対策としては「損への恐れが判断を鈍らせていないか?」と自分に問いかける必要があります。またこちらも同様に「〇〇になったら損切りする」などのルールを予め決めておくことで回避できますので、ポートフォーリオを作る時に織り込んでおきましょう。
3.自信過剰バイアス(自己奉仕バイアス)
これはすべての人が持っているバイアスであり、投資以外の場面であっても度々発揮されます。自己評価が高すぎて失敗するパターンと言えば分かりやすいでしょうか。
すなわち『人間は自分の能力を高く見積もる傾向にある』ということです。心理学の実験では度々行われるのですが、自分のチャレンジが
成功した場合:自分の実力
失敗した場合:運によるもの
と判断してしまうようですね。
特に成功している人は自分の実力を過大評価しがちであうため、主に中級投資家の間でこのバイアスに足元をすくわれるケースが後をたちません。失敗例として
・投資先を分散せずに自分の信じたところに全額投資してしまう(リスク分散が出来ない)
・自分の直感を信じすぎて取引数が必要以上に多くなってしまう(利益が伸びない)
などが挙げられます。
経験は大切な財産ですが、無条件に自分の実力を信じるのはもってのほかでしょう。このバイアスは非常に回避しづらいので、自分の失敗が視覚的に分かる記録を残しておくことが大切です。投資の世界はベテランであっても大きな損失を出すことが少なくありません。自分の実力をやや控えめに見積もることが出来るようにしておきましょう。
4.確証バイアス
これは投資した株について、自分に都合のいい情報ばかりを集める傾向にあるというバイアスです。つまり自分が決めた意見を後押ししてくれる情報しか頭に入らなくなっている状態ですね。
日常でこのバイアスが働く例としては、『第一印象が大事』という話がありますね。すなわち人間は、
・自分が最初にいい人だと思った人に対してはいい情報ばかりを集めるようになる
・自分が最初に嫌な人だと思った人に対しては嫌な情報ばかり集めるようになる
結果的に第一印象が最終的な印象の決定になってしまうというものです。
そんな訳で一度株を買ってしまうと、その自分の判断が正しいと考えられるような情報ばかりを入れてしまう傾向にあり、低迷時や暴落前に株を手放せなくなってしまうんですね。新しい情報に対する柔軟性が減らないように、運用ルールは決めておきましょう。
5.経験則バイアス
こちらは初心者~上級者まで広く陥ってしまうバイアスです。人間は客観的な数字よりも、自分の体験に引っ張られてしまうというもの。これについては「人間は直前の経験に予想以上に引っ張られる」というような話をしたことがありますね。
厄介なのは無自覚なところで、
「前回これを買って上手くいったからまた買おう。私はこの株には詳しいんだ。」
「前回損切りを我慢したら持ち直したので、今回も我慢しよう」
という意識が本当に気づかないうちに働いてしまいます。
類似するバイアスとしては近接性バイアスというのがあって、最近目にしたものや関わったものに引っ張られてしまうというバイアスもありますね。
経験は大事ですが、人間は自分の中の経験則を単純化してしまうので注意が必要です。
銘柄選びについても自分が得した株の関連株ばかり集めてしまい、ポートフォーリオの作り方が雑になるケースが多いんです。頻繁に株を買う人は、自分の経験とは切り離して正しい株をチョイスできているのか定期的にチェックしましょう。
6.親密感バイアス
人間はよく知っているものや専門性があるものに投資しがちであるという傾向です。もちろん専門性があるなら株の売り買いを有利にできる部分はあるかもしれませんし、初心者が株を選ぶ時の基準の一つにもなるでしょう。
問題は自分が詳しい分野の株ばかりを集めると、その業界が落ち込むと大ダメージを受けてしまうことです。それが職業的な専門性も関わってくるなら、株価も落ち込み本業も失速するという最悪のケースになってしまいます。ある程度投資に慣れてきたのなら、バランスの良いポートフォーリオを意識しましょう。
7.代表性バイアス
「この企業はIT系だから○○だろう」
「このチャートはじわじわ上がっていくタイプだ」
など、何か特定のステレオタイプに当てはめて単純化してしまうというバイアスです。
これは経験則バイアスにやや近いのですが、日常生活でもついついやってしまうことでしょう。日常生活においてステレオタイプに当てはめて考えることは判断を早くする方法としては優秀ですが、これが正しい判断材料の集めるための手抜きとして使われることが問題となります。
この手抜きが問題であって
・細かい分析を行わなくなる
・無意識に短絡的な判断をしてしまう
・面倒くさくなって過去の実績から判断してしまう
ことにより判断が間違ってしまいます。
8.その他バイアスを引き起こす心理効果
最後に人間の思考のバイアスを引き起こしやすい心理効果を紹介しておきます。人間は無意識に影響を受けてしまうので、定期的にチェックしてみてください。
①カリスマ効果
人間はカリスマに引っ張られる傾向にある
エコノミスト達の意見に引っ張られていないか?
②バンドワゴン効果
人間はついつい流行に流されるてしまう。
投資先は本当に妥当な業績を上げているのか?
③ツァイガルニク効果
人間は成功に対して失敗のほうが強く記憶に残ってしまう。
これらが無意識のトラウマになっているケースも多いので、失敗を自覚している場合は小さな成功を積み重ねて克服しておく必要がある。
④アンカリング効果
人間はキリのいい数字に引っ張られてしまう。
その数字の設定は本当に妥当なのか?
キリの良さよりも計算によって出た数字を意識した方がいい
なんだかんだで気づかないうちに何かに引っ張られて判断を狂わされていることが多いんですね。自分の頭で考えないのは常に間違いです。自分がバイアスにかかっていないか定期的にチェックするようにしましょう。