皮肉屋に知性を感じるのは幻想?
<皮肉屋は頭がいい?>
メディアでも日常でも、皮肉をよく使う人っていますよね。そしてそういう人たちは、何となく他よりも頭がいいと思われがちだったりします。実際『自分が知性的だと相手に思わせるためには、適度な皮肉やブラックジョークを使うことが有効』なんていう報告もあったりするほどです。シャーロック・ホームズなど、フィクションの世界でもこういった皮肉屋たちが高い知性を持っているように描かれていますね。しかし実際はどうなのでしょうか?
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0146167218783195
今回はそんな皮肉と知性についての報告について取り上げてみます。
<シニシズムと知性>
今回の研究は、社会的習慣や道徳などを懐疑的に捉えるという『シニシズム(批判主義・冷笑主義)』について調べた研究です。
【シニシズムは私達が思うほどスマートではない】
https://qz.com/1329802/cynicism-isnt-as-smart-as-we-think-it-is/
発表:2018年
対象:全世界30万人分のデータ、200人を対象とした実験
結果:疑り深い皮肉屋は一貫して有能ではない
研究者によると、「一般的には『人間は自己利益によって動かされる』と考えられているため、他者の行動を『自己利益に突き動かされている』とみなすシニシズムは合理的で賢明に見えがち。しかし、実際には賢明からは最も遠いものである。」「皮肉屋は何も学ばない。シニシズムは自分に落胆することを恐れて世界を拒絶するものだからです。皮肉屋は常に『NO!』と言うが、『YES』こそが成長の始まりである。」とのこと。
皮肉屋は合理的に見えて賢く見られがちだが、そこに成長はない
という、なかなか重みのある分析でした。
<皮肉と認知>
とはいえ実際、皮肉めいた表現や言い回しが、人間の脳に影響を与えることは知られています。
【最高の知性:皮肉は創造性を高める】
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S074959781500076X
皮肉は創造性を高めるという実験も出ていたりします。皮肉交じりの会話をした方が、新しいアイデアを思いつきやすかったんだとか。脳の抽象思考を司る部分が刺激されるので、皮肉を言った方も言われた方も創造性が高まるみたいなんですよね。
つまり、場面を選べば皮肉を使うことは有効であると考えられるようです。
<シニシズムと批判的思考の違い>
以前に取り上げた批判的思考(クリティカル・シンキング)も、皮肉屋の使う懐疑的な見方に近いように思えます。
しかし批判的思考は
・自分にも間違いがあることを認識する
・否定ではなく批判、「本当にそうかな?」という疑問を持つこと
ということで、自分自身もちゃんと疑おうという思考法です。一緒にしないように気をつけなければいけませんね。
そんな訳で、何でもかんでも否定する皮肉屋になっても真の知性は得られません。
世界を受け入れる姿勢を崩さず、「ほんとにそうかな?」という疑問を内面に持った人間を目指したいですね。
皮肉は常にまとうものではなく、必要に応じて使いこなすものです。