制限すると痩せる必須アミノ酸があるらしい
<必須アミノ酸についての意外な報告>
栄養の話をしていると、必須アミノ酸という言葉をよく聞きます。これはたんぱく質を構成するアミノ酸のうち人間が体内で充分な量を生成できないアミノ酸のことで、これらを食事からしっかり摂ることが重要とされています。ダイエットやトレーニング言われる『質のいいたんぱく源』というのも、必須アミノ酸をどれだけ多く含んでいるかというのが指標になることが多いです。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-16568-z
ところが新しい研究で、『特定の必須アミノ酸を制限すると肥満や糖尿病のリスクが下がる』という意外な報告が出されたので取り上げてみます。ただし、この論文を真に受けるべきということではなくて、むしろこの論文を利用した変なダイエットや怪しいサプリが出てきた時に、気付けるようにしておくことが大事なんじゃないかと思っています。
「実は一般的なプロテインにはデブ成分が含まれていた!」
みたいなサプリ類の宣伝や
「〇〇の肉は痩せるアミノ酸が豊富!〇〇ダイエット」
みたいな特集記事が出てきそうな気がするんですよね(笑)
<制限すると痩せる?>
必須アミノ酸が人間に必要不可欠であることは先程述べました。ただし、食事においてアミノ酸や必須アミノ酸の量を制限することは、糖尿病やがんやコレステロール値上昇の予防として有効かもしれないという研究がいくつか出ています。もちろん動物実験の段階なので確証はありませんが、「食事性たんぱく質希釈(DPD)」というテーマで研究が進められています。
今回実験を行ったのはオーストラリアの医学研究所とモナーシュ大学とシドニー大学の研究者達によるチームで、特定のアミノ酸の摂取量を制限したマウスを観察したものです。
【食事制限の本質的な要素】
結果としてトレオニンとトリプトファンという必須アミノ酸の量を制限したマウスは
・副作用なしにカロリー消費量が上がった
・糖尿病予防効果が確認できた
ことが確認できました。トレオニンは穀物に多く含まれる必須アミノ酸で、トリプトファンは乳製品や大豆製品を中心に含まれていますね。
研究者たちは「今回の実験で、代謝面での食事の役割を理解するためのピースを一つ埋めることが出来た」としており、2種類の必須アミノ酸について再検証を行っていきたいとしています。
<分かったこと>
今回分かったのは、
・必須アミノ酸によって代謝における役割が違う
・トレオニンとトリプトファンの保つ特性の一部
・まだまだ研究段階
ということですね。これらの言葉を使った安易なダイエットが出てきても真に受けないようにしましょう(笑)
必須アミノ酸の持つそれぞれの性質が完全に明らかになるのはまだまだ先のことでしょうが、今後も研究が進めば長寿や健康のために欠かせない必須アミノ酸を絞り込んでいくことも可能になるかもしれませんね。それまでは必須アミノ酸を含む食事をしっかりととっていきましょう。